自閉症スペクトラム☆院内勉強会

自閉症スペクトラム
院内勉強会(2016/5/27)

注意 本内容は当センターでの勉強会の内容で、一般的教科書と一部差異がある可能性があります。

定義

自閉症は先天性の障害であり、「愛情が足りなかったから」「本人が怠けている」ということが原因ではなく、生まれつきの脳機能障害であり、発達障害の一つである。

診断基準

DSM-5における自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)の診断基準

A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

症状・特徴

対人交流とコミュニケーションの障害

対人交流とは、他人の情動に対してどう反応するか、喜び・興味や達成感を分かちあうときの姿勢のことなどを指す。視線・表情・姿勢・友人関係なども含まれる。
・ひとりでいることを好む
・受け身な態度の対人交流
・一方的すぎる対人交流
・人情に配慮することに疎い

コミュニケーション

1.言葉を用いたコミュニケーション

・話し言葉が遅れている
・「おうむ返し」が多い(エコラリア、反響言語)
・話すときの抑揚が異常である
・言語による指示を理解できない
・会話をしていてもかみあわない
・敬語が不自然である
・皮肉を言っても通じず、たとえ話がわからない

2.非言語的コミュニケーション

・身振りや指差し(体の動き)が理解できない
・目線、眼差し(目の動き)が理解できない
・言外の意味が理解できない
・話の文脈が理解できない

社会性

社会性の障害
・じっとしていられずに、教室などから飛び出してしまう
・慣れないことをする、予定などの変更などからパニック状態になる
・自分の頭を壁などにぶつける
・髪の毛を引っ張る
・特定の物事に対して強い興味をもつ
・特定の手順、動作を繰り返すことにこだわる
・興味をもった領域に関して膨大な知識を持つ

感覚・想像力

感覚の障害
・特定の音を嫌う
・触られることを嫌う
・偏食になりやすい

想像力の障害

・見えないもののイメージをすることが苦手
・想像力が乏しく、曖昧なものに対する認識が弱い
・臨機応変に対応する力に乏しい
・自分の気持ちをうまく表現できない

評価

1.CARS
以下の三組で現わされる「社会性の障害」を評価する。

1. かかわりの障害:相互的な社会関係の質的な障害がある
2. コミュニケーションの障害:言葉のあるなしにかかわらず、その社会的使用が欠如している
3. こだわりの障害:狭小で反復性のある常同的な行動・関心・活動がある

上記の項目を評価するために詳細な評価項目を下記に挙げる。

1.人との関係:人に関心があるかどうか、対人接触を拒否するかどうか
2.模倣:言語性・動作性ともに、人の真似をするかどうか
3.感情:場面に適切な感情反応が見られるかどうか
4.身体の使い方:年齢相応の身体の使い方が出来ているかどうか、身体意識は正常かどうか
5.物との関係:物に関心を示すかどうか、適切な使い方が出来ているかどうか
6.環境変化に対する適応:環境や状況や活動の変化に対応できるかどうか
7.視覚による反応性:人や物を見るかどうか、中空を凝視したりおかしな見方をしないかどうか
8.聴覚による反応性:音や言葉に対する反応はどうか、敏感なのか無関心なのかどうか
9.近受容器による反応性:触覚・痛覚・臭覚の反応は正常かどうか
10.不安反応:愛着対象との分離に対する不安の有無、重力不安があるかどうか
11.言語性のコミュニケーション:発語の有無、オウム返しや奇妙な話し方があるかどうか
12.非言語性のコミュニケーション:顔の表情・身振りなどへの反応・表があるかどうか
13.活動水準:多動あるいは寡動か、行動抑制ができるかどうか
14.知的機能:知的機能に遅れがあるかどうか、また、アンバランスがあるかどうか
15.全体的な印象:自閉症~軽度の自閉症~中度の自閉症~重度・極度の自閉症

2.PEP-R(Psychoeducational Profile-Revised, 心理教育診断検査改訂版)

ほとんどの項目が言語なしで実施可能で時間制限がない
・ 検査用具に具体的なものが使われており、重度の障害児にも興味が持てるものとなっている
・ 被験者は誰でも成功できるよう、幅広い範囲の発達レベルをカバーするように工夫されている
※適用範囲は就学前以下の機能を持つ児童で、6ヵ月から7歳程度

尺度

1.発達尺度

①模倣、②知覚、③微細運動、④粗大運動、⑤目と手の協応、⑥言語理解  ⑦言語表出

各項目の採点は3段階
合格:やって見せなくても完成できる
芽生え反応:どうやればよいかはわかっているが完成できないでいる、もしくは検査者が何度か実演を繰り返したり、子供にどうやるかを教えた場合
不合格:どうやっても出来ないとき、もしくはかなり手本を見せても反応しなかった場合

2.行動尺度

①人とのかかわりと感情

②遊び・物とのかかわり

③感覚

④ことば

各項目の採点
適:適切な反応、特に問題行動はない
中:中等度の行動問題を有する
重:重度の行動問題を有する

できないところをやらせるのではなく、できそうなところを伸ばしていく

観察

行動観察
形式が整ったものではなく、普段の行動、フリーの時にどんな行動をとっているか、家でできるが学校ではできない。学校ではできるのに家ではできないことなど
インフォーマルな情報として最も重要なのは、家族等養育者からのもの
週日や週末の生活スケジュールの様子については、その詳細の聴取が必要
養育者が要望する療育プログラムの優先課題についても、情報を得ておく
学童であれば、担任教師からもできるだけ情報を収集しておく

治療

1.睡眠障害に対する治療
・自閉症には睡眠障害が起こりやすく、深夜まで寝ない・早朝に目覚める・不眠などの症状に対して、日中たくさん体を動かし、夜は眠りやすい環境をつくるなどの工夫が必要となる
・環境を整えても睡眠障害が改善されない場合には、薬物治療が行われる
2.精神病様症状に対する治療
・思春期や青年期などに多いのが学校や職場でのストレスによる精神病様症状であり、幻覚や妄想などの症状があり、過度の緊張状態になる場合もある
このような場合には、抗精神病薬などが用いられる

療育

1.基本的考え方
適応的な生活が送れるように発達全体の促進
環境調整や自尊感情を高める
適切な対応のための親指導

2.留意点
子供を認め、定期的に受け入れる(褒めることで表現する)
叱責を最小限にする
子供の不安を軽減し、情緒を安定させる
療育者と教員等の連携

コメントを残す