【作業療法士視点】エジソン箸のやめ時は?【箸指導シリーズ】
こんにちは、療育現場の作業療法士YASSYです。今回は当ブログでも人気記事である箸についての話です。
箸操作は、鉛筆操作、ハサミ操作と並んで小学校3点操作と呼ばれる(うちの勉強会だけかもしれませんが)こともある発達上大切な動作の一つです。
エジソン箸を使って、箸を使える様にと言うご希望がよく聞くため、箸を綺麗に使うためのステップを今回ご紹介しますが、前提として知っておいて頂きたい情報があります。
女子大学生に箸の持ち方を完璧なフォームである「伝統的箸使い」が出来ているか?と言う観点で調査した論文がありました。その結果、伝統的箸使いが出来ている女子大学生は、調査対象内の50%に満たない程度の習得率だったそうです。
主観ではありますが、箸で食べれると外食できる幅が広がってその子の人生が楽しくなる。だから練習したい。キレイじゃなくてもどこにでも置いてある箸で食べれる程度で十分っという気持ちで居て頂くとお子さんも、指導に当たる方も楽な気持ちで臨めると思います。
ちなみに綺麗な持ち方に修正した方へのアンケートも「キレイにもつ必要性があると感じたから」と言う理由が最多であり、大人になってから社会の場面の必要に応じて獲得しているケースが多い様です。
発達特性の有無や身体障害の有無に関係なく一つの育児の中に箸指導の概念に一つの考え方をご提案できればと思っています。
箸に関して療育の作業療法場面でも質問の多い、「補助箸(主にエジソン箸)から普通の箸へ移行していく段階について筆者なりの方法をお伝えしていきたいと思います。
こんな方に読んで頂きたい
- 育児中のママ、パパ
- 保育関係者の方々
- ついでに新人療育分野の作業療法士さん(^^)/
この記事は、専門家に相談するべきか悩んでしまう方の不安を取り除く事を目標に執筆しています。意外と簡単に解決できる内容かも知れませんのでお悩みの方や補助箸の活用を検討されている方の参考になればと思います。
この記事を読んだ結果…
- やっぱなくても大丈夫だと言う安心感。
- なるほど、こう言う所に気を付けるんだ、これなら家でもできそうだ。
- 補助箸ってこんなに考えて選ばれているんだ
っと「保護者の方」や「保育に関わる方々」に思って頂けたらと思います。ここを読んでも難しい場合は、専門家(療育センターや発達外来等に)に相談してみても良いかも知れませんがそれほど焦る必要もないと言う記事になっております。
療育のOTがエジソン箸を薦める理由
今回は療育現場での補助箸としての使用率90%を超えているEDISONのお箸を例に出していますが、機構の似ている補助箸や100円均一で売られている様な補助箸でも同じような事が言えると思います。
しかし、個人的にEDISONのお箸をオススメする理由に一つは、セットのケースなどがしっかりしている点などが挙げられますが…
一番の理由は、個人的にはお箸の先端が太く丸い事が挙げられます。
お子さんの救急外来を受診する事由の中に、歯ブラシやお箸等で喉を突いてしまったっという事例があります。
多くが口腔内に入れている時の転倒などが原因です。エジソン箸などで食事が自立してくると目を離してしまう場面も増えてくると言う可能性からも安全面への配慮が行き届いている箸を用いる事が良いと考えています。
※ただしEDISONのお箸を絶対に使えと言うわけではありません。使わなくてよければ使わなくても良いですし、実際筆者の娘は使わずして箸を獲得しました。
箸のはじめ時(発達段階から)
箸を始める時期についてスプーンを1歳すぎた頃から使い始め、その中で周囲の大人が使っていると少しずつ感心が高まり、使いたがる様になっていきます。
早ければ2歳から箸を使い始め、3歳頃には挑戦できる能力が備わってきていると言われています。
1955年の報告によれば、「握り箸」と言われる持ち方ができるのが3歳頃と言われている。
引用:山下俊夫:幼児心理学、朝倉書店、東京、93~95、1955
「遠城寺式乳幼児分析的発達検査」において、3歳の運動能力は…
片脚立ちで保持(立ち続ける)ができる様になったり、ハサミを使いだしたり、上着を一人で脱げる様になったりする年齢です。
ハサミや鉛筆、箸と言った動作は獲得に利き手の定まりが影響すると考えられています。しかし、利き手が定まるのは5歳頃からでありそれまでは右に行ったり左に行ったりします。
利き手の定まりが遅いとされている発達性協調運動障害(DCD)などの影響や発達特性があり体幹が低緊張の状態にあるお子さんは手の技能の発達に影響がある可能性が示唆されています。
参考先:新田収. 発達性協調運動障害の評価と運動指導 障害構造の理解に基づくアプローチ. 有限会社ナップ, 東京, 2018.
この様な観点から身体を支える力が十分に発達していないと箸の獲得の支障となると考えられています。
そのため、発達関連の病院で「箸動作の改善を希望」で作業療法が処方された場合にも、まずは、身体的機能の改善に取り組むケースが多くあります。
ちょっと脱線 体験談
大手回転寿司チェーン店に2歳のお誕生日にお寿司を食べに行きました。回転寿司では私達夫婦の箸と娘に取り分ける様にもう一本箸を用意して居ました。そして目を離した隙に…自分で使ってました。
作業療法士の娘に対する箸の始動時間は0分でございました。
この様に箸の指導は強制ではなく、使いたいと言う気持ちを誘発する事が大切であり、周囲の大人が使っている事やそもそも食事が楽しい雰囲気である必要があります。
普段旦那さんの帰りが遅くて、奥さんが1人で娘さんにご飯を食べさせていると他に箸を使っている人の様子を見る機会が少なくなってしまうなど感心が向きづらくなってしまうと開始が遅くなる原因になる可能性があります。
関連動画
エジソン箸のメリットとデメリット
便利な機能のメリットとデメリットを整理して、デメリットが目立つ様になったら所で終了と言う形を提案させて頂きたいと思います。
メリット
エジソン箸のメリットは…
- 利き手が定めやすい。
- 手の機能はグーパーが出来れば形になる。
- 成功体験が得やすく、箸で食べる動作に関心が向きやすく習慣を作りやすい。
普通の箸は二本の棒をどっちの手で扱うか困る所ですが、1つの道具として連結されている為、認識がしやすく、リングの都合上右手のものは右手でしか使えませんので、利き手が不安定な幼児にも与えやすいのが大きなメリットです。
リングに指を通せば、操作はグーパーの動作で可能となり、指の分離運動が不十分でも行えるのは導入しやすい用品と言えます。
簡単動作で実施できる分、お子さんは対象物を挟んで、口に運ぶ事に集中しやすくなります。
そ の結果、成功体験を得やすく食事をたのしむ事ができると思います。お腹が減っているのに食べられないと嫌になって箸の練習所ではなくなってしまう可能性がある為、エジソンがを用いるメリットと考えられるでしょう。
デメリット
- 下の箸の支え方が学習できない。
- 上の箸を親指の指腹(指のお腹)で支える経験ができない。
実はエジソンのお箸Ⅰでは、グーパーの動作でできる為、「下の箸」を薬指と親指の付け根、人差し指の付け根で支える事が学習できません。(分かりづらい場合は関連動画の11分11秒のあたりから見ていて抱けるともう少し理解しやすいかも知れません)
また、エジソンのお箸Ⅰがトングの様に箸の後方で一つに連結されている構造の都合で、親指の指腹で上の箸を支えますが、エジソンのお箸Ⅰでは箸を開いた際に親指が離れます。その都合上、親指の指腹部で「上の箸」を支える経験を積むことができません。
その結果…そのままエジソン箸を普通の箸に変更した段階では、「握り箸」から進んでいるとは思いますが…
母示支え型、示中支え型と呼ばれる親指が二つの機能を果たせていない形となっている可能性が高い状況にあります。
持ち方の分類の参考先:上原 正子:箸の持ち方・使い方の発達段階別の差異,瀬木学園紀要 .8,.7 (2014)
ただし、筆者としてはこれでも箸で麺類などは食べれる段階になるので本人が苦にならなければ良いと判断する様にしています。
標準的な(伝統的)箸の持ち方は少なくとも 15 歳以降であることが示唆され、年齢の上昇により伝統的な持ち方の比率は上昇する、と報告されている。
立屋敷かおる、山岸好子、今泉和彦:小中学生における箸の持ち方と鉛筆の持ち方との関連、日本調理科学会誌、38巻4号、355~361(2005)
この報告の様に、15歳以降のに完成するとされている箸使いについて余程の事態が無ければ、小学生の段階では焦って押し付けるのではなく、キレイに持てた時に褒めてあげて、キレイに持つことにモチベーションが持てる様になった段階で自分で修正してもらう事がベストであると考えているからです。
結論 エジソン箸のやめ時は?
上記のことから…
- ピースが出来て、人差し指と中指だけをグーパーできる。
- エジソン箸を使いながら薬指と小指を握り込める。
この様な様子が見れて来たら移行期(やめ時)に入ったと言えます。
それでも移行できない場合は?
エジソン箸Ⅰは卒業できそうなのに、普通の箸では全く持てなくて困っています。このまま普通の箸練習をすると嫌いになってしまいそうです。
そんなときはこれです!
エジソンのお箸Ⅱ
エジソンのお箸より一歩進んだ、小学生から大人の女性まで対応のお箸。
これまで開閉機構が箸の後方にあって学習しずらかった親指のポジションでしたが…
開閉の視点が箸の中央に移動したことで、多少学習しやすくなりました。
最後は無茶苦茶な商品紹介となっていますが結構良い成績が残せています。
この記事が皆様の療育・保育・育児のヒントになればと思います。
誰かが言ってくれている事が正解じゃない。その子が楽しくできる事が正解なんだ。
正解を求める旅に終わりはありません。
一緒にお子さんの正解を探し続けましょう。